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『IT産業 再生の針路』 破壊的イノベーションの時代へ【IT産業 崩壊の危機・続編】 [本(コンピューターシステム)]


『IT産業 再生の針路』 破壊的イノベーションの時代へ【IT産業 崩壊の危機・続編】

『IT産業 再生の針路』 破壊的イノベーションの時代へ【IT産業 崩壊の危機・続編】

  • 作者: 田中克己(日経BP社編集委員)
  • 出版社/メーカー: 日経BP出版センター
  • 発売日: 2008/12/04
  • メディア: 単行本



今年の春頃読んだ、「IT産業崩壊の危機―模索する再生への道のり」の続編だそうです。
この業界の人間ではありますが、「日経コンピューター」とか読んでいないので、たまにこういったまとまった情報を仕入れる必要があります。最近は、技術どうこうよりも、大小のITベンダーの経営の方に関心があります。

簡単に言って、この本の趣旨はこうです。
「世界的な日本企業は随分数多いですが、IT産業となると、どうしてこうも世界に太刀打ちできない閉鎖社会の会社ばかりになってしまうのでしょうか?」

「如何にも」という感じはします。
ただ自分は思うのですが、システム構築会社とソフトウェアパッケージ開発・販売会社は全然違います。
この本で強調しているのは主にシステム構築会社のことですね。
そもそもシステム構築会社など、本家のアメリカ合衆国でも、どんな会社があるのか自分もあまり知りません。アメリカ人のSEが日本に来て活躍しているという話も全然聞きません。基本的に、先進国の人が日本でSEやっているって、無いですね。あっても、外資系の会社の社内SEぐらいかな。聞くのは中国とインドの会社の人々の話ばかりですね。

はっきり言って、現代のシステム構築の作業は、力作業のところが相当あります。
かなり建築業に近くなっています。
最初の「要件定義」は、ユーザーの要望を聞き取り、それを如何にシステムにしていくか、と言うところで、言語の壁等あれば、そうとう不利で、頭もけっこう使いますが、それ以降は根本的に、労働集約的な仕事に近いですね。

やはり、労働集約的な仕事ということになると、断然、賃金の高い先進国は不利なのは当然のことです。
NEC、富士通、東芝、日立などのシステム会社、NTTデータ、NRI等、国内の経常利益不振により、その活路を海外に見い出そうとしているようですが、そう簡単にはいかないのではないかと予想します。
理由はいろいろあります。

労働集約的な仕事のわりには日本人技術者の単価が高すぎる。
相変わらず人月単位の仕事が主流。
(能力の差別化が難しい)
日本の企業はパッケージ多用しなくて、会社単位に一から手作りしていて費用と期間がかかりすぎる。
汎用機を捨ててコストを低下させるつもりが、結局、汎用機の開発と同じ様にやっている。
新しい技術やオリジナルなアイデアを考える経営者や技術者があまりいない。
ITベンダが生き残りをかけ、必要でもないものを売る時代になりつつある。
(造っても使用されないシステム)
会社の上層部から、SEやプログラマへの愛が全然足りない。
(”うつ”とかかなり浸透している)

まあ、シビアにこういったことを考えていくと、今のままでは日本のITベンダーと言われる存在は段々とその居場所を失われるのではないですかね。
利益率が低いのも当然と言えば当然で、それは日本のITベンダーには付加価値資産がほとんど無いからでしょう。単に営業が取ってきた仕事を下請けに放り出しているだけに近いですから。
やはり、顧客重視の流れからいくと、本当に必要のあるものだけが残り、必要ではないものは残らないものです。

【ただ、日本の金融機関と通信・交通網を支える一群の集団は必要かな。また、どの企業も最低限、自社のシステムを支える人は必要か・・・】

要は、単なる労働集約的な仕事は今後、日本企業では成功する望みはあまりないと思います。
根性とか飲みにケーションや、安売り競争で解決する問題じゃ無いですよ。

はっきり言って、ITベンダーが生き残るかどうかなど客は全く考えてくれません。
日本のITベンダーの業績が再生しようがしまいが、客はゴミ程も考えてはくれないのです。
特に、ITベンダーの客はほとんど会社なので、値段が安くて良い物の方に流れるのは当然のことです。
一般顧客相手なら、ステータスを求めて、逆に「値段の高いもの」を求める心理がけっこう働きますが、会社相手はそういうのはゼロに近いですね。

日本のITベンダーが生き残れるかどうかは、まだ答えは出ていませんが、もし、客のニーズに答えることができないならば、潔く、足を洗うか、業種を変えるくらいの大変革をしなくてはならないでしょう。

ま、時代は常に変転しています。
国に栄枯盛衰があるように、産業にも栄枯盛衰はあるものです。

タグ:IT産業

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