SSブログ

宗教からよむアメリカ [本(アメリカ)]


宗教からよむ「アメリカ」 (講談社選書メチエ)

宗教からよむ「アメリカ」 (講談社選書メチエ)

  • 作者: 森 孝一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



アメリカという国は、功利主義の国でもあるが、また、かなりの宗教国家だなあ、と思う。
以下、ちょっと箇条書きみたいな感想です。

まあ、そもそも、イギリス国教会の迫害から逃れたピューリタン等、新教の人々が元になっている国なので、当然と言えば当然かもしれないが。その根源の部分を考えてみれば、アメリカにおける信教の自由は、銃の所持の自由と同じ様に強いのかもしれない。

アメリカ的な政教分離と、日本の政教分離は根本的に異なっており、アメリカのそれは、宗教間の対立から一方に有利にならないように、という意味での政教分離であり、決して宗教や宗教活動を尊重していないわけではない。日本のそれは、敗戦以降、GHQが中心になり、日本神道を恐れての政教分離であり、かなり宗教全体を影の存在に持っていっている。但し、日本の歴史を見ればわかる通り、宗教と共に歩んできた歴史である。神道と仏教が融合され、それに儒教も道徳的な支柱としてブレンドされている。キリスト教も数は少ないがアメリカの歴史と同じくらいの期間、根付いている。本当は日本も”かなりの”宗教国家であったわけだ。

アメリカの大統領の就任式は、プロテスタントの日曜の礼拝にそっくりの式典である。自分も高校生くらいまでは教会の日曜学校に通っていたから礼拝の感じはよくわかる。ただ、アメリカのキリスト教で感じる事は、日本の仏教もそうだけど、ちょっと儀礼式になり下がってしまっているのかな、という感じはする。「信仰」、「教え」、そういったものはかなり薄れてしまっているのだろう。そして、自己主張の強い国だから、あまり大教団はできないのだろうか。

かなりのキリスト教国家ではあるが、やはり本当に熱心に神を信じている人は昔に比べてだいぶ減っているだろう。現代のアメリカでは、かつては宗教が補完していた部分を医者、弁護士、ソーシャルワーカー、心理学者、等が代わりにやっているのではないだろうか。

但し、もともとは進化論論争(人間は神によって創られたVSサルから進化しただけか)をまともに行える国なので、「神を信じる」とかいう感覚・強さは、多少、日本よりは強いように思う。決してまだまだ無神論国家ではないが、ただ、宗教の代替部分をいろいろな形で補完しようとしている様に見てとれる。政治が強い国なので、大統領が牧師の総代みたいなものでもあると思う。

ボランティア精神が発達しているのは、やはりキリスト教の愛の教えが根付いているのかな。

アメリカで、あなたが尊敬する人の世論調査を行うと、現職の大統領、過去の大統領、政治家、牧師が上位のほとんどを占めるようである。日本とはえらい違いである。

ただ、やはり歴史の浅さはどうしようもない感じで、人々を救済する心の教えも、「積極的に生きよう」、「強く思えば実現する」等、その程度で止まっているかな。